2013年7月3日水曜日

2013.2.11例会 避難、除染、家族、雇用の問題~南相馬のこれから -竹内容堂さん

スピーカー 竹内容堂  南相馬市在住 ホワイトレイブン代表
日時・場所 2013211日(金)大阪市立中央公会堂第6会議室

 幼少期沖縄で過ごしその後横須賀など関東圏を転々。仕事はイベント企画屋で町起しなどに携わる。福島の土地と人が好きで永住することにして11年たつ。震災で学んだことはすべてに理由(根拠)があるということ。例えばなぜ原発に大半の人が反対しなかったのか。マネーがないと冬が越せないから。とはいえ調べてみてああやっぱり要らなかったね、私たち知らなかったんだな。国は私たちを騙したと言って運動する人もあるが、そんな暇があったら今を何とかしようよと考えている。
 4月頃南相馬の市役所の人が「身体から1ミリシーベルト出ている。ダメだよ南相馬」と呟いていた。6月ホワイトレイブンを立ち上げ放射能に関する情報を全国の科学者から集め測定所も3・4か所作って活動を始めた。放射能の心配で子供たちの遊ぶ場がない。市役所から土地を借り高見公園に遊び場を作った。除染を徹底し段ボールで山を作り木材でジャングルジムを作ったり。震災前なら事故があったらだれが責任を取るんだと大もめしたに違いない。今は必要ならば市民や地元の自分らが動いてやるしかない。
 
 一方で汚染されて住む人がいなくなればそんなことやる必要ないという人もある。だが避難せずに残る人もある。南相馬市は6万6千の人口が1割減ったが、約6万人がここで生活している。南相馬の中でも鹿島区の人口はプラス。原町区はマイナス。小高区は住んでいないことになっている。この違いは30キロ圏のウチとソト。だが線量の高低ではない。避難していると賠償金が出るが戻るとカットされる。中には国と東電を許せないから絶対戻らないという人もある。
 そこで将来的には「移動できない人」だけが残る可能性がある。そうなると新しい事業は作りにくい。復興といっても地元に若者や動ける人がいないと、県外から来て除染などの作業をするだけになる。その除染も大もとの放射性物質を突き止めず樹木は樹木、地面は地面と別のスタッフがバラバラに計測作業をやっており形だけのものになっている。地元には若い人が憧れるような魅力的な仕事がない。おカネ以外の夢を持てる仕事が欲しい。
 地元の苦しみはまだほかにもある。避難に対する身内からの非難。なんで逃げるんだという声。避難先での差別やいじめ。出て行った人だけでなく残った人の心も傷つき荒んでいく。野菜が風評被害で売れなくなる。出荷相当額の何割かの賠償金を受け取る。しかししそれまでの生活と生き甲斐は取り戻せない。
 さらに疑惑と不信の連鎖。例えば原発事故の処理はチェルノブイリと日本は対照的。向こうではコンクリートで固めて埋めてしまう。こちらはそうではなく薄くして散らばしている。今も垂れ流しているというか確かに大気中に若干出ている。チェルノブイリのように高いレベルではなくちょっと出ている。しかし少しでも大量でも出ていると問題になるからちょっと出ているとは言えない。それは正直言って隠していると思う。そうするとほかにも隠しているのではないかとどんどん広がり、特に避難者は「福島の言うことは信用しない」、「もう戻りたくない」というのが大半である。
 高速バスで大阪に朝着いた。マクドナルドのコーヒを飲む。あ、いいな、大阪って。まず暗い顔をしている人があまりいない。辛そうな顔をした人も暗さの感じが違う。あ~いいな、辛くていいねって、その辛さが味わえて、という感じ。初めて通天閣に行ってみた。やっぱり楽しそうで賑やか。スパワールドで聞こえてくる話は学校のことだったり、お父さんこんなことがあってねとか。南相馬だったら今日学校で除染があってねとか、放射能の勉強があってねとか。
 やっぱり夢がないといけないなと思う。みんな未来センターなど交流できる場所を作ると地元の高校生などが遊びに来る。当初その子らはすごく暗い顔をしていた。親から毎日のように「将来どうするんだ」と怒られる。親は自分のことを言っていると思う。南相馬にいてどうしようと自分が不安だから子にあたっちゃうんですね。一度親を怒ったことがある。「もっと子供の声を聞いてくれ。親も辛い。でもあんたの親だって辛かったはずだよ。もっと子どもを大事にしてくれ」と。親も分かってくれ、「大学に行くまでの間預けるからこの子のためになることをやってくれ」と言う。「わかった。何か心配なことは?」と聞くと男遊びをしないように。夜10以降けっこう犯罪が多いから出歩かないこと。車で事故らないでくれとお云うので、わかったその3つは守ると。その子は今は明るくなっている。
 調べてみると震災後福島県内の児童虐待が約5倍に増えている。精神科にかかっている人も増えている。病院に行かない人もあるから、危ない人の掘り出しをやっている段階。そうして子どもたちのケアを少しづつやっている。それはは本来行政にお願いしたいという声も仲間うちからも沢山ある。ただ行政とぼくら市民の役割はまったく別個だと思う。人の集まりが村であり町であり行政だと思う。だが市のおカネのことは税務課が決め町づくりは町づくり課が決めている。1人の人が決定権を持っている。漠然と市が何とかしてくれるでなく、その人に話をして動かしていく方が南相馬のためになるのではないか。
 南相馬でも楽しくやっている人は楽しくやっている。ハッピーな人はハッピー。dもその陰には苦しんでいる人も沢山いる。遊びに来てくれた人、出会った人がハッピーになればいい。それを少しづつやっていくしかないのかなと思う。でかいことはできない。でかいことはおカネであったり、時間であったり、大手の力であったり、政治家の力であったり。できることからこつこつとできることをできるだけやり、できないことはできないと潔さでできればなと思う。
 救えない子が1人いた。給料10万円、家賃なし、交通費全額出すという条件でウチの事務所で働いていた。3日前の朝いなくなった。何かというと「私に期待しないでください」。期待でなく普通に仕事していただけなんだが。こういってはいけないかもしれないが逃げちゃう子は仕方ないと思う。去る者は追わずというか追えないというか、追ったら傷つけるというか。
南相馬全体で仲間が少しづつみんな共和国、ホワイトレイブン、みんな未来センター3つの所へ集まり始め今働いています。それでも全く手が足りない状況。ホローワークで募集しているけれど応募はない。また補助金や助成金のひどい話もある。おカネだけがばらまかれてい。おカネをもらうための形だけの事業だから効果はない。
 おカネは確かに欲しい。だがおカネでできないことが増えているし、うそをついてはいけない。今日ぼくがここで南相馬のいちばんひどい現地の話をして、皆さん寄付金待っていますのでと言ってしまえば、それを信じてしまえば多分おカネは出してもらえる。でもおカネを欲しくてここにきているわけではない。皆さんとお話がしたい。これから11日の会の人とぼくらホワイトレイブンの現地の人と関係が深まって、今困っている人との交流ができればそれが最高のギャランテイと思っている。1人1人が動けるような環境を作ることを考えてお手伝いしていただければありがたい。この考えはみんな未来センターでほぼ毎日のように仲間と話し合っている。 

おカネがないと動かないので変なところへ流れないように監視しながら、できるだけ戻りたい人は戻れるように、出たい人は出られるように、住みたくないという人は住まないように、その人それぞれが一番いい形をできるよう選択肢のある南相馬を作っていきたい。